[関]
1)軍というものをどう考えるか 2)日本国にとって国防とは何か 3)自衛隊をどうするか ーについて討論を始めることを要請したいと思います。 -------------------- [鏡] 日本の明治期からの動きで有名な言葉は「利益線」と「生命線」であり、この線は「解釈改憲」どうよう動いてしまいます。・・・ そこで「自衛」とか「防衛」という場合に、なにを「自衛、防衛」するのか、どのように防衛するのか、を個別の法ではなく、憲法議論に際し行うべきか?は議論しておいてもいいと、思います。 ------------------ [松本] 軍隊(ないしそれに類する組織)の機能として、 1、戦争を行なう(侵略と防衛の線引きは果たしてできるのか?は措くとして) あ、侵略戦争 い、自衛戦争 2、国土を防衛する(1と同一視しないこと。防衛=戦争とは限らない) あ、戦争 い、テロなどの組織的犯罪 3、住民の権利を守る(これも1と混同してはならない) あ、交戦状態の時 い、自然災害などの時 う、その他のパニック時(食糧難とか石油ショックとかドル暴落とか) 4、国際法秩序を守る あ、国連の平和維持活動や国際協力活動 い、在外邦人の保護 などがあるが、ここで問題外なのは1-あ、4-い(侵略戦争の口実に使われることが多い)。残った機能に関して、どのような組織によるどのような活動が有効なのか。 軍隊の目的が国土防衛と住民の人権擁護だけだとすれば、それは消防庁の管轄で良いのではないか。 ------------ [白崎] 私も、国内の自衛ということを考えたときには、上記のイメージです。私の住んでいる地域も、ムラの消防団があって地域の人が自治会として参加しています。火災や水害などがあると専門集団の消防と共に活動します。つい最近までの自治会消防団長は、地元の酒造会社の社長がやっていました。スイスの民間防衛の考えもその延長でしょう。 ------------ [関] 1)第二次世界大戦をもって総動員の工業的な国民戦争の時代は終りました。冷戦期の戦争は内戦ないし内戦への同盟国の介入として発生したものです。その冷戦も終り、今の世界で起きているのは軍事ではなく政治によってしか解決しない「紛争」です。世界最強の米軍がイラクで窮地に陥っているのも、そのためです。 2)同盟の時代はもう過去のもの。その中で日本の安全を脅かしているのはアメリカとの同盟です。このままでは米中の衝突に巻き込まれる恐れがある。 3)自衛隊は始めから米軍の補助部隊として作られたので国防には関係がない。これが議論の要になることでしょう。 4)そこで国防といえば鏡さんが言うように「何を守るのか」が議論の根本でなければおかしい。今の日本にマキアベリが守ろうとしたイタリアの都市の文化みたいなものはあるんでしょうか? 5)それはさておいても、日本の国防には戦力は殆ど必要がない筈。中立国になればシーレーンの防衛など気にする必要はなくなる。大戦中でも中立国の船舶が攻撃された例はありません。また日本の地理的位置にはスイスやポーランドのような戦略的価値がない。ただユーラシアをコントロールしたいアメリカにだけ日本列島と沖縄は価値があるのです。 6)だから純粋な国防としては、海上保安庁を沿岸警備隊に、消防庁を国土警備隊に格上げすれば充分でしょう。 7)それでも軍が必要だとすれば、それはあくまで国際協力のためでしょう。 8)そこで急に第九条を評価したら妙に思われるかも知れませんが、自衛隊が憲法の制約で「戦力なき軍隊」を建て前としてきたことは再評価していいかも知れない。戦争がなくなった世界における軍の在り方を先取りし軍の新しいモデルになるという見方もできる。 9)つまり人間的安全保障を原則とする破壊ではなく建設のための軍隊、人道援助と災害出動を基本的使命とする国際協力機構ということです。パキスタンの震災を見てもやはりヘリなど機動と補給の高い能力をもった組織は必要なようです。また治安という点では軽火器ぐらいは持っていていい。そういう軍隊には、戦闘より語学や地域文化の知識、医療活動やNGOと連携できる能力などが要求されると思います。こうした軍のイメージの転換ということをフォーラムの論題にしてもいいのではないでしょうか。 ------------------- [関] 軍と国防の問題では改憲フォーラムは、1)「何を守るのか」、2)「現代の軍事に ついて適切な認識を持とう」という二点を議論の柱にしたらいいと思います。 今の世界で起きているのは軍事ではなく政治によってしか解決しない「紛争」です。 先に上記のように書きましたが、ロイター電が英国の軍事問題の第一人者であるルパー ト.スミス将軍の「実力の効用」という著書を紹介しています。スミス将軍は現在は 引退していますが、湾岸戦争では英軍の機甲部隊を指揮、ユーゴ内戦でも国連軍の総 指揮をした英国きっての軍人です。この本で彼は、国家間の総動員の工業的戦争はヒ ロシマへの原爆投下で終り、今は冷戦も終って「もう戦争というものはなくなった」 と述べているそうです。そして現代の局地紛争や国家の破綻、テロは従来の軍事力で は解決しえないことがイラク戦争ではっきりしたと断言している。 英国の有名な戦略研究所もその年次レポートでこの見解を支持している。そしてス ミスによれば、アメリカやNATOよりEUの方が国家建設、治安の維持、インフラの再建 などの経験が豊かなので紛争をうまく解決する潜在的能力がある。知的な軍人は皆そ う考えているんでしょう。今頃になって自衛軍を作ろうなどと言っているどこかのト ボケタ国は半世紀以上前にタイムスリップしているようですね。 --------------- [新井] 軍隊というものの本質を変えていく際にポイントとなるのは、自治との関わりを考えることにあるのではないでしょうか。自治の政治の在り方と軍隊を連動させることによって、かなりその毒を除去できるのではないかと考えます。たとえば外征のための軍隊は(国際協力などのケースもありますが)、私見では不要です。日本が連邦制になったとき、統合的な武力を廃止し、警察が建前上そうであるように、自治体(この場合は州)の指揮下に置かれるべきではないでしょうか。 憲法として考えるなら、「国権の発動とその象徴たる武力と武装組織は永久に放棄する。ただし住民にその存在意義と基盤を置く自衛組織は、各自治体の判断により常設することができる」というようなものが良いと思います。 --------------- [松本] 考えるべきことは、軍隊は巨大なテクノクラートと既得権益の集団である、ということ。イタリア憲法ではないが、民主的な軍隊、あるいは官僚風味を極力抑えた軍隊とはどんな組織になるのか(一例はスイスの民兵組織や地域の消防団の延長線上にあるような自衛組織)、どこに所属してどうやって維持されるのか、といったことは考えるべきであろう。 by shiryouko | 2005-11-14 09:33 | 安全保障
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